積み上げられた家具と店舗の値段
小さな会社だが入社した社員は半年かけて、社内の各部の手伝いをして回ったあと、正式に配属を決める。
その間、先輩社員との微妙な距離感を楽しむことになる。
先輩社員の中に面白い人がいた。
その先輩は、昼食に行くと「この店舗の資産価値は」、その帰りには「今の店にはどんな家具があった」なんて聞くのである。
しかも、その数日後に「あの店の資産価値評価は変わってないか」などとだめ押してくるのである。
なぜか聞かれるのが面白くなってきたが、わずらわしくなり、その先輩とは距離を置くようになった。
14人いた新人は半年で6人になっていた。
6人に「役員面接で配属希望を述べてもらうが、その前にレポートを提出する」という説明があった。
テーマは、駅前商店街の店舗を1軒買い取る計画を6人で書くというものだった。
期間1週間で、会議室を1つあてがわれ「がんばれよ」である。
6人ともプログラマである。
途方にくれた。
とりあえず、商店街の不動産屋に行くことにした。
行ってみると、店先に椅子や机などの家具が積み上げられ、店内でワックスがけをしている姿が見えた。
ワックスがけが終わるまで、近くの喫茶店で待つことにした。
「店舗を買い取る」とは何を意味するのかという話になった。
土地は買わない、業態が変わる、くらいしか思いつかない。
登記関係、各店舗の経営状態を調べておかないと言い値にされる。
また、不動産屋を通せば無用なコストが発生する。
買えればいいというわけではなく、商店街を無用に刺激すれば買取交渉、買取後の業務展開に支障が出る可能性もあり、商店街の役員へは事前に挨拶に行く。
などの話になった。
不動産屋の前に家具が無ければ、安易に相談し、取り返しのつかない事態になったかもしれなかった。
家具に感謝した。
